【書評】ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
高野 誠鮮 著
唐沢寿明さん主演のドラマ「ナポレオンの村」の原案でもあります。
大学が農学部だった僕としてはとても興味深い内容でした。
過疎化が進み限界集落になっていた村、世帯年収が平均87万円だった村を、わずか年間予算60万円で復興させていくという、小説か何かを読んでいるんじゃないかと思わされるようなすごい実話です。
既存のやり方を踏襲してきて今の限界集落が出来ているのなら、今までのやり方通りにやったら同じ結果になると、本来であれば承認を取るのに時間をかけてから動く公務員でありながら全て事後報告で動くという破天荒っぷり!
革新的なアイデアをどんどん出していく姿はとても魅力的です。
もちろん、破天荒な事をやり続けるわけだから最初はなかなか受け入れられません。
それでもゴリッと実践していくメンタルの強さ、その姿勢で多くの人を巻き込んでいく様は同じ男として憧れてしまいます。
田舎で、収入も少なくて、携帯電話も圏外で、若者がどんどんいなくなっているという限界集落から、「何がないか」ではなく、「何があるか」という発想で動いていき
・電波がないから携帯電話に縛られないゆったりした時間が過ごせる。
・田舎ならではの人間関係から、「よそ者が入りづらい」ではなく「最高の精神的な教育システム」がある。
・限界集落という現実を見て村人に自信がない→自分で作っている農産物の価値を見出せるよう促していく
・デパートなどから引き合いが来ても、品薄であることを売りにして市場価値を高めていく
などなど、村に人が集まり、村の価値を高める仕組みを考え改革を進めていきます。
タイトルにもなっているローマ法王に米を食べさせるための展開もすごいです。
日本の美味しい米TOP10に村のお米が入っていることを知る。
→村の名前が神子原である。
→神子=皇子だ!!と宮内庁御用達のブランドを付けるために天皇に食べていただくよう上申。
→途中まで話は進むけどすでに決まったところがあるからと断られる。
→可能性の無視は最大の悪策だと、なんとかブランド化できないか考える。
→神子原=the son of God dwells
”son of God”で有名人と言えばキリストだとローマ法王庁に手紙を書く。
→日本のバチカン市国大使館経由でローマ法王への献上が決まる。
とんでもない行動力ですよね(ㆁωㆁ*)
JAを通すよりも直売にしたほうが農家の年収は上がるということから、法人を立ち上げて直売所を作り、実際に月収30万円以上の農家さんをどんどん輩出していきます。
はじめは直売にすること、法人を立ち上げることとやったことがない事をやろうとするので村人からめちゃくちゃな反対に合いますが、反対意見はどこ吹く風で会議に会議を重ねて実践していく「決めたことをやる力」にはただただ脱帽です。
直売にすることで生産者と消費者が顔を合わせ、消費者が喜んでくれる姿を見た農家さんが、さらに良いものを作っていこうとモチベーションを上げていく。
直売のほうが儲かるとかそういうことよりも、喜ばれることが原動力になっていくってとても素敵だなと思います。
それまで農産物を使って家で作って食べていた味噌やケーキを直売所で売り出していくと、「○○さんのケーキありますか?」とわざわざ買いに来る人がいる。
最初は「私が作ったものを売るなんて・・・」と言って自信がなかった農家のお母さんたちがどんどん輝いていったエピソードを読んで、「自分が出来ること」の価値を見出し発揮していく場をつくることの大切さを感じました。
今までやってきたこと、今の自分にあるものには必ず価値があると信じて、それをどう発揮していくかだなとつくづく思います。
世帯年収を大幅に増やして村おこしをしたあと、「奇跡のリンゴ」の木村秋則さんと一緒に自然農法をはじめる話もとても興味深いです。
新しいことにチャレンジする時は反対されるのが当たり前で、反対どころか邪魔までしてくる人もいたりしますが、それでもやり続けるリーダーの存在って本当に大事なんですね。